多気山不動尊(不動寺)概要: 多気山持宝院不動寺は栃木県宇都宮市田下町に境内を構えている真言宗智山派の寺院です。多気山不動尊の創建は弘仁13年(822)、尊鎮法師(日光を開山した勝道上人の高弟)が馬頭観世音をもって開山したのが始まりと伝えられています。その後一時衰退しましたが建武2年(1335)に当時の宇都宮城の城主宇都宮公綱(宇都宮家9代目当主)が勝山城(栃木県さくら市、宇都宮氏一族の氏家氏の居城、後に芳賀氏の支城)の城内に境内を構えた明王院の本尊だった不動明王像を当地の本尊として迎えて中興開山し宇都宮家代々の祈願所としました。境内は多気山(標高:376.9m)中腹に配され、長い石段の両側には地蔵や石仏が奉納されています。最上部には本堂はじめ歳神殿、大師堂などの諸堂が建立され霊気ただよう空間になっています。
多気山不動尊の本尊である不動明王座像(多気山不動尊:平安時代後期作、寄木造、像高1.73m)は天暦3年(949)に源頼光(清和源氏3代目当主)が願主となり円覚上人(源満仲の子)が吉野の山中で一刀三礼で彫り込んだものとされ、昭和32年(1957)に宇都宮市指定有形文化財に指定されています。伝承によると不動明王座像はその後、石山寺(滋賀県大津市)に安置されていましたが、平安時代後期に奥州に前九年の役が勃発し、鎮圧軍の率いた源頼義の苦戦が伝えられると、石山寺の僧侶だった藤原宗円が不動明王座像を奥州まで携え戦勝祈願し勝利に導いたそうです。宗円はその功により宇都宮の地を与えられ宇都宮氏の祖になると、不動明王を篤く信仰したと伝えられています。
又、多気山不動尊境内一帯は宇都宮市内で唯一原始林の面影が残る地域で植生も植物地理学上貴重なものとされ昭和32年(1957)に宇都宮市指定天然記念物に指定されています。又、境内から山頂にかけては天正13年(1585)に宇都宮氏によって築かれた多気城跡で居城の宇都宮城に対し詰城として機能したようです。栃木県内でも最大級の山城で多気山全体が要塞のように計画され、不動寺は主郭から見ると北東方向にあたる事から鬼門鎮護の役割を持っていたと思われます。
多気山不動尊本堂は木造平屋建て、重層入母屋造り、銅板葺き、平入、桁行3間、正面1間軒唐破風向拝付き、外壁は真壁造り板張り。歳神殿は木造平屋建て、入母屋、銅板葺き、妻入り、外壁は3方柱のみの吹き放し。下野三十三観音霊場別格札所。北関東三十六不動尊霊場第18番。下野七福神:寿老人。山号:多気山。宗派:真言宗智山派。本尊:不動明王。
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