寺山観音寺(矢板市)概要: 与楽山大悲心院観音寺(通称:寺山観音寺)は栃木県矢板市長井に境内を構えている真言宗智山派の寺院です。寺山観音寺の創建は養老4年(720)、藤原房前が東征で当地を訪れた際、霊地と感じ戦勝祈願すると見事念願成就しました。この話が都に伝えられると、神亀元年(724)聖武天皇の勅願により行基菩薩(奈良時代の高僧)が開山し、本尊として千手観音と両脇侍が安置されたと伝えられています。
寺山観音寺は当初、法相宗の寺院で法楽寺と号し高原山剣ヶ峰(標高:1540m)山頂近くにありましたが延暦22年(803)に落雷により焼失、大同元年(806)に平城天皇の勅願が発せられ、坂上田村麻呂が現在地へ移すと徳一上人(最澄・空海に並ぶ高僧)を招き中興開山し七堂伽藍が整備されました。正治2年(1200)には鎌倉時代初代執権北条時政の命で法橋行縁が堂宇と境内を再整備し仏像などの修復も行っています(諸説有り)。中世は領主だった塩谷氏の祈願所として庇護され寺領1000石を安堵され末寺18ケ寺を擁すなど寺運が隆盛しますが文禄4年(1595)当時の当主塩谷義綱が改易となると庇護者を失い一時衰微します。
寺山観音寺は江戸時代に入ると宇都宮藩主の祈願所や幕府の朱印寺となって庇護され、江戸時代を通して1月15日には住職が宇都宮城に登城し藩主に祝賀を行う事が恒例だったそうです(登城の際は拾万石の格式である駕籠に乗ることが許された)。
現在でも寺山観音寺は文化財指定された多くの寺宝を所有しており、建物も天和4年(1684)に建てられた観音堂(木造平屋建て。入母屋、銅板葺き、平入、桁行5間、梁間4間、正面1間向拝付、外壁は真壁造板張り)や楼門(三間一戸、桁行3間、張間2間、八脚門、入母屋、銅板葺き、外壁は真壁造板張り木部朱塗り、上層部高欄付き、下層部左右には阿形像、吽形像安置)があり平成9年(1997)に選定された「やいた建物十選」に選ばれています。本尊の木造千手観音菩薩坐像は秘仏とされ60年に一度御開帳されます。福一満虚空蔵菩薩堂は木造平屋建て、宝形造、銅板葺き、桁行2間、張間2間、外壁は真壁造板張り。下野三十三観音霊場第7番札所(御詠歌:はるばると のぼりておがむ かんぜおん みのりとともに たえぬまつかぜ)。山号:与楽山。院号:大悲心院。寺号:観音寺。宗派:真言宗智山派。本尊:千手観音菩薩。
寺山観音寺の文化財
・ 木造千手観音坐像-鎌倉初期,カヤ材,一木造,像高93.6cm-国指定重要文化財
・ 木造毘沙門天立像-鎌倉,ケヤキ材,寄木造,像高119.5cm-国指定重要文化財
・ 木造不動明王立像-鎌倉時代,ケヤキ材,一木造,像高114.3cm-国指定重要文化財
・ 木造二十八部衆立像(28躯)-永享13年,平均像高80cm-栃木県指定重要文化財
・ 木造行縁僧都坐像-正治2年(1200),像高84cm-栃木県指定重要文化財
・ 銅造大日如来坐像-天明元年(1781),像高110cm-栃木県指定重要文化財
・ 銅造千手観音坐像-鎌倉時代初期-像高36cm-栃木県指定重要文化財
・ 木造風神・雷神像-鎌倉-風神:66cm・雷神:68.3cm-栃木県指定文化財
・ 観音寺のイチョウ-樹齢約350年,樹高28.5m,幹周4.8m-栃木県指定天然記念物
・ 掛盤膳-貞享元年-木質,漆塗,縦横32cm,高さ18cm-矢板市指定有形文化財
・ 角型四ツ足香炉-延宝7年-青銅,14.5×11×13.5cm-矢板市指定有形文化財
・ 飲食器(仏具)-貞享元年(1684)-矢板市指定有形文化財
・ 境内全域-寺山緑地環境保全地域
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